「・・・あたしを殺す気?」

体を小刻みに震わせながら、それでも負けまいと相手を睨む

「なぜ?」
男が言った
「おまえはもう、警察にあの夜の事を話す事は出来ない」
タバコに火をつける
「言えば身近な人間が確実に死ぬ」


“確実に死ぬ”


純はその言葉が事実である事を認めた

「無駄な殺しはしない。おまえも今まで通りの生活に戻れ。忘れるだけでいい」

純がカッとなり
「忘れる!?死んだ人は・・・」
男が右手の人差し指を口に当てる
「声が大きい」
いつの間にか純の右側の首筋に、小さなナイフが当てられていた

男の左掌でうまく包める大きさ
周囲から見れば、ただ首筋に手を当てている様にしか見えない

純はゾッとした

ナイフを当てられた事ももちろんだが、そのしなやかな男の動きに恐怖を覚えたのだ

「忘れる事だ」
男は左手をポケットにしまうと、純とすれ違いざま呟いた

「出来なければ、次は葬る」

純はしばらくそこから動けなかった