「遥香、酔っぱらったでしょ?」

海堂に薦められるまま、赤ワインを飲んだ遥香は顔が真っ赤だった

「へへっ、ちょっとね」
遥香が舌を出した

純はお酒は断っていた
たぶん遥香は、海堂の薦めを断りたくなかったんだろう

(やれやれ・・・)
帰りはあたしが最後まで見届けてあげないと

まさか酔っぱらった遥香を、海堂と二人だけにする訳にもいかない

「純チャンは真面目だね」二人のやりとりを見ていた海堂が言う
「未成年ですから」
純がツンとして言う
(この人、あたしがいなかったら遥香を酔わせて・・・?)

純が二杯目のジンジャーエールに手をかける


― スッと、テーブルの脇に立った男がその手を押さえた


「ころ・・・」
純は慌てて口をふさぐ



殺し屋だった

人前で「殺し屋」なんて呼ぶわけにもいかない

海堂が
「こちらは?」
純が慌てて
「あっ兄です!あたしの」
「かっこいいお兄さんだね〜」
海堂が椅子から立ち
「海堂と言います」
なんだか楽しそうに、手を差し出す

殺し屋がその手を取り、二人が握手した

「職業・・・僕と同じ様ですね」
にこりと、海堂が笑った