夜22時

ドアがノックされた

アポはないはずなんだけど・・・
黎香は机の上の書類を引き出しにしまう

「どうぞ」
ゆっくりと扉が開き、殺し屋が中に入ってきた

「あら、珍しいわね」

“仕事”の依頼で黎香が呼び出す事はあっても、彼の方からここを訪れるなんて今までなかった事だ

「何か飲む?」
黎香はワインセラーから一本取り出してみせる
殺し屋は軽く手を振った

「なにか不備でも?」

自分のグラスにワインを注ぎながら黎香が訪ねる

今まで二人の間に仕事上のミスは一度もなかった

依頼仲介人と実行者

他の仕事以上に、この仕事は信頼が 重視される
1度信頼を失えば、それで終わりだ

過去、男と女の関係を持った事のある黎香と殺し屋といえど、それは例外ではない

殺し屋が静かな声で
「この前の仕事の山田孝について確認したい」
「と、言うと?」
「奴の殺害依頼はある大学病院。理由は病院側にとってダメージになる情報を奴が盗み出したため、だったな?」
「それ以上詳しくは話せないけど、ね」
黎香がグラスを傾ける