森本はスカートの上でぎゅっと拳を握ると、


「今日あたし……予備校さぼっちゃったんです」


と、まるで大罪を告白する殺人犯のような悲壮な声で言葉を漏らした。


「え?予備校??さぼった?」


「今日だけじゃない。もう一週間も立て続けにさぼってて…さっきはお母さんから電話だったんです」


「一週間も?どうして…」


僕が聞くと、森本は突如両手で顔を覆い、泣き出した。


「もうこんなのイヤ!あたしはお母さんの人形じゃない!!」


まるでヒステリックに喚く嫉妬に狂った女のような声を上げて、森本は声を上げ体を曲げた。


僕はその姿を呆然と見つめるしかなかった。




―――――

――


「ほら。温かいココアだよ。飲みなさい」コンビニで買ってきた缶のココアを森本に手渡すと、まだ涙に濡れて虚ろな表情をした彼女がゆっくりと顔を上げた。


「とりあえず落ち着いて。話を聞くからゆっくり聞かせて」


その言葉に森本も気を許したのか、小さく頷いてココアを受け取った。


おずおずとプルタブに指をかけたが、昂ぶった感情はそうすぐおさまるわけでもなく、彼女の指先は小刻みに震えていた。


僕は無言で彼女のココアを取ると、プルタブを開けた。


「…すみません」と森本は涙の溜まった目をしばたかせて、恐縮したようにココアを再び受け取った。


「ありがとう、だろ?気にしないで」


僅かに笑って森本を見ると、彼女は驚いたように目を開いて、それでも


「ありがとう…ございます」と頷いた。