そんなことを話しているとリビングから久米のお父さんがちょっと顏を出した。
「お風呂あがったかい?」といかにも柔和そうな顔つきだった。喋り方も優しいし、けれどハキハキもしていて不思議なリズムだった。
「あ、はい。ありがとうございました」頭を下げると
「制服、乾くのまだ時間が掛かるから、その間夕飯でもどう?寿司を取ったんだ」とお父さんはにこにこ。
寿司…?
「いえ、流石にそれは」と断ろうとした。そもそもあたしの目的は久米と久米のお父さんと仲良く団らんと言うものではない。ちゃんと謝ろう、それだけだったのに何故かシャワーを借りて、しかも制服まで乾かしてくれると言う優遇を受けている。
「まぁまぁこんな時間だし。何せ、冬夜が女の子を連れてきたのははじめてだから。ちょっとしたお祝い」とお父さんは悪戯っぽく笑った。
お祝い…てかあたし久米の彼女じゃないし。
「父さんはりきっちゃってさ。俺はピザの方がいいんじゃない?って言ったけど、ピザは冷めたらまずくなるからって」
いやいや、久米。あんたも方向性がずれてるよ。と思いながら
「早く来なよ」と久米に腕を引っ張られ、有無を言わさずリビングに通された。
久米って時々、素で強引。前はこんなことなかったのに。
二年も経つとこんなもの?



