「これは?痛いか?」
つき指したと言う久米の右手の人差し指をゆっくりと押したり引いたり。
その手付きは慎重だった。
「いえ…大丈夫です……」
久米が答えると、保健医は首を捻った。
「うーん…診たところ突き指してるとは思わないけど、もしかしたら骨に異常があるかもな。腫れてきたり、これ以上痛くなるようなら次は病院に行け」
と会話を締めくくり、それでも一応冷湿布を取り出した。
「……ありがとうございます」
丁寧に頭を下げ、久米は指に張られた湿布をじっと見つめる。
「気をつけろよ」保健医の声を聞きながらあたしたちは保健室をあとにしようとした。
出入り口に行きかけて、あたしは保健医の元に駆け寄った。
「聞きたいことがある。あとで電話する」
久米に聞こえないよう、椅子に座った保健医に素早く耳打ちして、あたしは保健医の返事も聞かず久米と保健室を出た。
「保健室の―――…林先生だっけ?鬼頭さん、あの先生と仲がいいみたいだね」
久米はちょっと苦笑しながら切り出した。
「仲がいい?やめてよね、あんなヤツ」
あたしは眉を吊り上げた。半分本心で半分嘘―――
あいつのことは好きじゃないけど大切で、あたしの脳内を占める割合は水月に続いて乃亜や梶と同じ位置にある。
だからあいつにも迂闊に近づけない―――



