「ほっとけばそのまま治るよ」と苦笑する久米を、


「骨に異常があったらどうするの。一度診せた方がいいよ」と言って半ば強引に保健室に連れて行った。


ガラッ


「ねぇ先生~学校の外で不審者が出たんだって。あたし怖~い」


「途中まで一緒に帰ってくださぃ」


女生徒たちの賑やかな声が聞こえて、あたしは腕を組んだ。


ここはいつも煩いほど賑やか。


「不審者もわざわざお前らなんてケバイ女狙わねぇよ。第一学校を出ればすぐ大通りじゃねぇか。そこまで先生たちが見張りに立つって言ってるし、大丈夫だ」


なんて相変わらず保健医は毒舌っぷりを発揮して、しっしと手で払っている。


「え~ケチぃ」とブーブー言う生徒たちを追い払うと、


「またお前かよ」と保健医は呆れたようにため息をつきながらあたしを見てきた。


「んで、今度はどーしたよ。お前も送ってほしいって口か?って言うかお前が不審者ごときでビビる可愛い女か?」


と随分失礼なことを言ってくるし。


まぁただの不審者だったら、びくびくしないけどね。


「違うよ。今日は患者さんを連れてきたの。ほら」


あたしたちのやり取りを呆然と聞きながら突っ立て居る久米の背中を押し出すと、保健医はメガネをちょっと直した。


「患者?どっか痛いのか?鬼頭に殴られでもしたか?」なんて保健医はあたしを見てにやにや。


あんた…あたしを一体なんだと思ってるんだよ。


目でそう睨むと、保健医はあたしの視線を無視して久米を丸い椅子に座らせた。


こいつ性格は悪いけど、仕事は信用できるし結構真面目なんだよね。


あたしは一番近くのベッドに腰掛け、二人のやりとりを眺めることにした。