HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



岩田さんと買い物を終えて再び久米と合流して、その後本屋さんでりんごスイーツのレシピに役立つ料理本を一緒に立ち読みしたり、ゲームセンターでクレーンゲームで遊んだり…久米は意外(?)とうまかったり。あたしと岩田さんにそれぞれうさぎとくまの掌サイズのぬいぐるみを取ってくれて、岩田さんは大はしゃぎ。


てか久米、ゲームも得意とか。ホント嫌味なヤツ。


でも、ちょっと嬉しかったり。ピンクのリボンをしたくまは可愛い。手の中にあるくまのぬいぐるみを眺めていると


「え!鬼頭さんもそんな顏するんだ!」と岩田さんから指摘され「どんな顏?」と言う意味で思わずすぐ隣にいた久米を見上げると、久米はあたしの頭をぽんぽん。




「すっごく可愛く笑うんだね」




は―――?


「って、岩田さんが」と岩田さんの方を見てにっこり笑い、名指しされた岩田さんが何故か赤くなってて


「鬼頭さん、ちょっとちょっと!」と腕を引っ張られて久米からちょっと距離を取り、耳元でひそひそ。


「ねぇ久米くんのことホントに何とも思ってないの?」


「……うん」


「そうなんだー、だってすっごくお似合いなのに。てか久米くん絶対鬼頭さんのこと好きだよね」


「…うーん…」


その質問に何て答えていいのか。と言うもの、久米があたしのことを好きなのかどうかあたしには実際分からないんだ。


それらしいことは聞いたけど、それはあたしを挑発するための台詞だった気がするし、その後打ち解けてそれらしい雰囲気になったけれど一線を越えることはなかった。


だってあたしたちを繋ぐのは二年前の気持ちだけ。過去のあたしたち。あたしは二年前とは違う。久米だって違う。


だから本当のところ久米があたしをどう思ってるのか、分からなくて。ただ


『守りたい』


あの言葉は本心だと思うけど、その言葉の裏に恋や愛の感情が絡んでいるのかどうかが分からない。


ふと、思うんだ…


久米は―――二年前にあたしのこと守り切れなかった。だから、今度こそはって言う使命感みたいなものがあるんじゃないかって。『約束を守りたい』そう言った言葉を守るため、ただそれだけな気もするけど。実際のところ分かんない…


あたしの方も―――二年前に久米を傷つけ、絵を描けなくさせた、その負い目がある。


美術バカの夢を奪った。美術バカの未来を奪った。



考えたらこんなあたし



守る価値ないよね。



でも、だからこそ…あたしたちを繋ぐのは二年前のあたしたちだ、と再認識した。