HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



岩田さんが行きたい雑貨屋さんてのは同じフロアでカフェから数軒離れた所にあった。通路側から見る限り、明るい照明の下、見るからに女子が好みそうなピンクや淡いブルー、白とか言った色で彩られた、鏡やハンドタオルみたいな物がディスプレイされている。


岩田さんは「さっき画材屋行ったついでにちらっと見たらさー、“これ”見つけて」


と手にしたのは一つの小さな薔薇の花のモチーフの下、キラキラと同じ色合いのジルコニアがぶら下がっているケータイストラップだった。ちょっと凝ったデザインで、結構可愛い。


でも


薔薇―――…


まぁ薔薇のモチーフなんていかにも女の子が好きそうだし、どこにでもありふれてるものだ。


「ね、色違いでお揃いにしない?」と岩田さんが赤い薔薇と、淡いピンクの薔薇のストラップを手にして提案してきて、岩田さんの申し出にちょっとびっくりして目を開いた。


岩田さんがつまんだ二つの薔薇のストラップを凝視するしかできない。その場で固まっていると、何を勘違いしたのか岩田さんは慌ててそのストラップをラックに戻し


「ご、ごめんね!何か押し付けてるみたいで、ちょっとウザいよね」


と恥ずかしそうに笑い頭を掻く。


「いや……ウザいって言うか―――


ちょっと…いや、かなり」




―――嬉しい。



最後の一言を言いあたしは赤い方の薔薇を手に取った。ついでにピンクの方を取ると岩田さんの手に置く。


岩田さんは「良かった~、引かれたかと思った」と笑い


引かないし。てかすっごく嬉しいし。


だってあたし―――


乃亜以外の友達と呼べる女の子と初めて



お揃いの何かを共有できるんだもん。



何か……“友達”がいるって案外いいことかも―――