HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



“そっち”の問題も早く片付けなきゃ。課題は山積みだ。


思わずフォークを握った手にきゅっと力が籠ると


「あ、久米くん可愛いストラップー」と岩田さんが久米のスマホにぶら下がった蛍光緑のエルモを指さし。


「でも顔色悪くない?」と岩田さんに言うと


「顔色っ」と岩田さんは何が可笑しいのか声をあげて笑った。


でもちょっと考えるようにして、閃いたのかあたしの方に身を乗り出して


「ね、鬼頭さん。あたしさっき可愛い雑貨屋さん見つけたんだけど。付き合ってくれない?」と聞かれて、あたしは頷いた。もう文化祭の買い出しは終わっている。


「俺、ここに居るから二人で行ってきなよ」と久米は爽やかに笑って手をひらひら。手にはスマホ。きっと右門 篤史にコールバックするに違いない。


「じゃぁ行ってくる」あたしは大人しく席を立ち上がった。出かけるフリをして久米の動向を探ることをちょっと考えたけれど、岩田さんがいるし、久米もあたしたちが店を出て行くのをじっと見ている。


ここで変な動きは取れない、か。


諦めてあたしは岩田さんと歩き出した。


「あ~!夢みたい!だって久米くんと買い物だよ!?♪」岩田さんは久米と離れて急にテンションをあげて手をバタバタさせる。


「そんな嬉しい?だって久米と買い物だよ」こっちはテンション下がるっつうの、と意味でため息。買い物だったら水月としたいし。てか水月に迂闊に近づけずフラストレーションたまってる、って言った方が正解かな。


でも岩田さんが楽しそうだからこれはこれでいいかな。