あたしたちは近くにあるカフェに向かった。アイスティーなんかの飲み物を買ってきて、テーブルに落ち着く。
飲み物と一緒にアップルパイを買って文化祭の研究……と言いたいところだけど、純粋に楽しんで味わった。三角形のアップルパイはホイップクリームとミントの葉がオシャレに飾ってある。
「何これ、しっとりしてておいし~♪」岩田さんが口元を緩めてびっくりしている。
「ホントだ。バター多めなのかな。見た目もいいよね」とあたしも岩田さんの隣で欠片を口に運んでいると、あたしの向かい側に座った久米のアップルパイは三分の一程度で止まっていた。
「何、あんた甘いもの苦手?」とあたしが聞くと
「いや苦手じゃないけどたくさんは…」と苦笑い。
「食べないんならちょーだい」あたしはまだ「いいよ」と聞いてない久米のアップルパイが乗ったお皿を引き寄せた。
「リンゴを薄く切って砂糖と甘く煮詰めて添えるのもいいよね。あ、あとシュガーパウダーとかシナモンとか振りかけたり」と岩田さんがちょっと考えるように顎に手を掛け
「リンゴジャムでロシアンティーみたくするとかは?」と久米。いつも思うけど、こいつって結構想像力豊かって言うの?アイデアを出すのが上手い。
案の定「それ、使える♪」と岩田さんが頷き、「何かすっごく楽しくなってきた」と純粋に目を輝かせている。そのお喋りの途中、久米の鞄の中でスマホの着信音が聞こえてきた。コール音は長く、電話が掛かってきたと言うことは分かる。
久米はそれを取り出すと、ディスプレイを見たのちちょっと目を開いて、それでも応答することはしなかった。
「いいの?」と岩田さんが気にしていて
「いいよ、大した用じゃないだろうし」と久米はさらりとかわす。
直感、
電話の相手は―――
右門 篤史―――



