「僕……友達って言える人が…いなくて……
だから……何でも腹を割って話せる人がいて……心配してくれる人がいて……その友達も嬉しかったと思います…し、幸せって言うか…」
根岸の口から語られる言葉を飲み込むよう、僕は口に放り入れた焼き鮭の欠片をごくりと喉を通し飲み込んだ。
僕はまこと長い間、友達関係だったが『幸せ』と改めて思ったことはない。確かに彼に片思いしてたときは、一挙手一投足に緊張したりドキドキはしたけれど。
そう考えると、友情って何だろう。ぼんやりと考えていると
「ぼ……僕にはいないから……相談できる人も……笑い合える人も…
……知ってます、僕が根暗なこと……
一年生のときの影のあだ名は“キモオタ根岸”…でした。もちろん……話しかけてくれる人もいなくて……勇気だして…自分から話しかけても……ウザがられて……
だからクラスから浮いちゃうんです……」
とつとつと語られる根岸の内部。彼を構成してきたもの、彼の通ってきた環境。僕は一言一句聞き漏らさないように耳を傾け、時折頷いたりやんわりと否定したりした。
「だから二年生に上がるとき、特進クラスに行こうって……決めてました。特進クラスは…頭が良い人しかいけないから…分かり合えるって言うか…
いや!あの……僕が頭が良いって言ってるわけじゃなくて…」
根岸は突然あたふたしだして、僕は思わず苦笑。
「真面目な、って言いたいんでしょう?」とアシストすると、
「……はい」根岸は頷いた。
「だ、だから―――
も、森本さんもそうなんじゃないかって……
いや…森本さんの場合、僕とは逆で……」
―――森本?



