HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




泉先生も、宮内先生も―――ついでに言うと和田先生も、森本のお母さんがモンスターペアレントと言った本当の意味がここにある、そう確信した。


僕たちは森本の家庭に問題がある、と思ってるが


お母さんは僕たちに問題がある、そう断言している。


食い違う双方の意見。


「先生は勉強を教えてればそれでいいと思っていらっしゃる節が多々ありますが、それだけじゃなく、生徒の心のケアをするのもお仕事のうちじゃないのですか」


僕が次の言葉を準備する間も与えず、お母さんがはっきりと言い切る。


「もちろん、仰る通りです。ですが、僕としても彼女たちと正面から向き合ってるつもりです。そこに手抜かりはありませんが、『向き合う』と、『通じ合う』は違うもので、彼らが心を開いてくれない限り、僕たちは立ち入れないのです」


ようやく意見が言えたが、これがお母さんに通じるとは思えなかった。


だが、予想に反してお母さんは小さくため息をつき


「エミナも何で、特進クラスを選ばなかったのか……」と、僕に聞こえるか聞こえないかぐらいの小声でぼそりと口の中で呟いた。しかし僕の耳にはしっかり届いていた。まるで僕が担任で不服だ、最初から期待などしてなかったけれど、と言われた気がしたが、そんなことはいい。


「え―――…?」思わず顏を上げると


「何か」とお母さんが冷たく聞いてきて、僕は慌ててかぶりを振った。


僕は―――根本的なことを見誤っていた。


先生方が口を揃えて『問題児を押し付けられた』と言っていたが、森本の成績からすると二学年に進級する際、特進クラスに進むかどうかを聞かれた筈。そして選択肢は生徒側にある。雅も一年生の終わり頃、そんな話をしていて彼女は勿論蹴ったが、つまり森本も特進クラスの進級の話を蹴ったと言うことだ。


でも、何故―――……