HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



結局、森本はホームルームの際も戻ってくることはなかった。その後の授業に戻ってきたのかどうかは分からないが、三限目と四限目の間の休み時間、たまたますれ違った梶田がごく自然な動作で僕に近づいてきて


「森本、あの後帰ってない。珍しいよな、あいつが授業を欠席するなんて」とボソっと報告してくれた。


森本―――どこに行ったのか。


保健室で休んでいるかもと思って、一応保健室にも顏を出したが、まこ曰く保健室にも来てないらしい。と言うことは帰ったと言うことか…


念のため、森本の家に電話を掛けたが、電話は繋がらなかった。森本の母親もどこかに出かけているのかもしれない。買い物とか、習い事とか、色々考えられたが、あれこれ想像しても繋がらないものはしょうがない。


一旦諦めて、もう一度昼休憩のときに電話を掛けようと思った矢先、


「神代先生!」


と和田先生がちょっと慌てた様子で僕を呼び止め、


「和田先生、どうしたんですか」とのんびり答えると


「どうもこうもないですよ…!」言いかけた言葉を飲み込み、また慌てて周りを見渡すと


「ちょっとここではなんですから、準備室に…」とせっかちに僕の腕を取ると、有無を言わさず僕は和田先生の準備室に連れて行かれた。


まるで連行されるかのような勢いに僕はただただ驚いたが、彼の準備室に入るや否や彼は扉の内側からきっちり鍵を掛け


「神代先生は知ってるんですか?鬼頭と久米が付き合ってるって噂」と真剣に言われ


ああ、なるほど。彼も僕と雅の交際を知ってる数少ない人物だと言うことをちょっと忘れていた。