HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



あたしは一連の出来事を、目を細めてじっと見つめていた。


いや。出来事って言うには大げさかな。


たかが受け取りのミスだ。


結局梶と久米のチームは勝ったし、誰も何も言わない。


久米もすぐにいつも通り、爽やかな笑顔でクラスの男子とハイタッチしている。


「おい!お前たちっ!こっちも試合終了だ。男子のバスケばっかり見てないでこっちに集中しろ!」


と今更ながらいかにも熱血そうな体育教師の怒鳴り声が聞こえて、あたしは顔を戻した。





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更衣室で着替えを終えて、帰りのホームルームの時間、水月がちょっと顔色を曇らせて全員の顔をゆっくりと眺めた。


「さっき和田先生から聞いたんだけど、学校の近くで不審者が目撃されたらしい」


「不審者?痴漢とか?」


女子の一人が聞く。


「よく分からないけれど、若い男で学校の周りをうろついていたばかりか、双眼鏡を使って学校の様子を伺ってたみたいだ」


「えーやだ!キモッ」


と言うほとんどが女子の声だったけれど、教室にどよめきが走る。


「帰り道はくれぐれも注意するように。不審な者を見つけた場合、下手に刺激せずに学校へ逃げ帰るように」


水月は神妙な面持ちでクラスを見渡し、そしてその視線はあたしの場所で留まった。