HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



昼休憩、あたしは乃亜と梶、それから久米と言うメンバーで机を寄せてお弁当を食べた。


流石にストーカー犯の話をするわけにも行かず、このときばかりは世間話をしていたけれど、噂の真意を確かめにきたのか、他クラスや学年からあたしたちのクラスを覗きに来るやつもいた。


中には一年前にこてんぱんにやっつけてやった新聞部が全く懲りてないのか無断で写真を撮っていったが、普段なら「何すんだよ、プライバシーの侵害だ。人には撮影された写真を勝手に公表されたりしないよう主張できる権利があるってこと新聞部なのに知らないの?」って追い払ってやるのに、今は新聞部すら利用できると思ったからそのままにしておいた。


「なんか…ギャラリーの居る中で飯食うのもどうかと…」と梶が口の中に箸を突っ込んで顏をしかめ、あたしも同意。まぁちょっと前まで乃亜と喧嘩みたいなことになってたから元に戻って良かったちゃ良かったけど。


「明日の学校新聞では“校内のビッグカップル誕生!”とか書かれそうじゃない?」と乃亜は新聞部をちらりと見て苦笑い。


「俺も。流石にそこまで神経太くないみたい」と焼きそばパンを食べ終えた久米もぐしゃりと袋を握り苦笑い。けれど


「あ、鬼頭さんの卵焼き美味しそう、貰うね」と勝手にあたしのお弁当箱から卵焼きを手でつまみ口に放り入れる久米は


神経太く……って言うか、かなり図太いよ。てかあたしの卵焼き。水月が美味しいって言ってくれて彼の大好物になった水月スペシャルを何勝手に食べてんだよ。


まぁそのおかげで(?)噂の信憑性を高める効果はあったようだけど。


方々で「うっわーマジか!」とひそひそ声が聞こえてきた。


そんな中、


「文化祭のちらし出来た~♪」と女子の一人がはしゃいだ声を挙げ、「今日から配布しよー」とクラスメイトにちらしを配り歩いていた。当然あたしたちも配布するちらしを受け取り


てかこれ一人10枚もあるじゃん。面倒…


とため息を吐きつつも


「各階にある掲示板に貼るのとかどうだろう」と久米が言い出し


「あ、それいいじゃん。楽そうだし」


と乗ると、


「じゃぁ行こ」とあたしの手を取って立ち上がる久米。ちょうどお弁当を食べ終えてランチバッグに仕舞い入れた後のことだった。


てかマイペース過ぎるよ。