乃亜と梶が付き合ってるなんて、もちろん嘘だけど、協力者にはそう思いこんでてもらいたい。そうすることで梶もターゲットから外される筈。
第一容疑者(?)の森本さんが居ないからあんま意味のない発言かもしれないけど、
「マジかー!!てか、お前いつの間に楠さんと!」
「いや、な~、何か色々相談に乗ってもらって何となく『いいな~』て思っちゃって」と梶が照れくさそうにして顏をふいと背ける。
打ち合わせ通りとは言え(さっきはヒヤヒヤしたけど)梶……なかなかいい役者っぷりじゃん。
その話を聞きつけ、あたしたちの周りは一気に人だかりが出来た。
「えぇ!久米くんと鬼頭さんが!?梶くんと楠さんが!
まぁ…でも、うん。お似合いって言うか、あたしらじゃ鬼頭さんや楠さんに太刀打ちできないし」とA組とは比べ物にならない程あっさり認めるムード。一方の男子も
「くっそー!!D組のアイドル二人を久米と梶が!」
アイドル……まぁ乃亜にはその素質があると思うケド。
それでもA組程陰険で、下衆なヤツはいないようで、羨ましいと言った感じはあったがそれでもすぐに納得した。随分あっさりした感じだったけどみんな「仕方ないか」と言った感じ。
まるで大物芸能人同士の結婚話のよう。
そう言うわけで、あのインパクトのあるシールのメッセージの噂話はすぐに鎮火した。
そんなワケで午前中には、この噂はクラス内に留まらず、あっという間に学年全域に知れ渡ったようだ。
そうして迎えた昼ごはん休憩。
それまでの間、やっぱり森本さんは
戻ってこなかった。



