短い朝礼が終わって、次の歴史の授業になる合間、やはりさっきのインパクトのあるメッセージが皆気になるのか、水月が剥がした後きれいになった黒板を眺めてひそひそ噂話。
「あれってさ、絶対A組の仕業だって」
「あ、やりそう!」
と、A組の連中が犯人説も浮上していた。まぁあたしにとっちゃどう噂されててもいいけどね。
そして
森本さんは―――
次の授業が始まっても、
帰ってくることはなかった。
森本さんは―――“容疑者”の一人だ。水月の所に森本さんのお姉さんのピアスが送られてきた。しかも薔薇のシールを森本さんも持ってた。状況証拠は揃っている。
一限目を終え、休み時間。隣に座っている久米が椅子ごとあたしに近づいてきた。机に肘を付き傍から見たら楽しそうにあたしに耳打ち。
「森本さん、怪しいよね」
内容、全然楽しくないけどね。
「まぁあれだけじゃ判断がつかないよ」
と、顏を寄せ合い、しかもパフォーマンスで机に置かれたあたしの手の上からきゅっと久米の手が重なり、傍から見たら楽しそうに内緒話をしているあたしたちの様子を見て、また変わったざわめきが起こった。
「え!何!二人って…そーゆう関係…」と近くを通りかかった、梶と割と仲良しな男子が目を丸めていた。
「うん、俺が猛アタックしたんだ」と久米が爽やかに笑いながら認め
「そうゆう関係」とあたしが無表情に付け足すと
「マジかよ!!超羨まし……じゃなくて!優輝!お前いいんかよ!鬼頭さん久米に取られちまって!」と梶の友達が勢い込み、ちょうど乃亜が梶にキャンディの袋を手渡していたとき
「え……うん…」と梶は慌てて頷き、「や!別に良いって言うか、俺も乃亜ちゃんと付き合うことになったし!」と慌てて手をふりふり。がその節に受け取った筈のキャンディが床に転がった。
わざとらし過ぎる演技に思わず顏をしかめたが、乃亜がナイスアシスト
「もー、梶くんそそっかしい」と乃亜がふわふわ笑いながらキャンディーを拾う。
「あ、あははー悪り」
これも作戦の一つだ。



