おもむろに梶と目が合って、あたしは「ばぁか」と梶に分かるように口を動かせた。
それでも梶は照れくさそうにちょっとはにかむと、元気よく走り回ってる。
「はぁ。梶くんすっごい人気だねぇ」と乃亜がちょっと吐息をつく。
「はりきっちゃって。バカみたい」言ってやったけど、梶、ちょっとかっこよかったよ。
一方同じチームの久米も負けてはいない。
梶みたいな華やかさはないけれど、パスの正確さとシュートするフォームは素人目から見てもきれいだった。
「久米くんって何でもできるね。まさにパーフェクト?♪やっぱ王子だわ」
女子たちが噂している。
あたしは噂話にちょっと耳を傾けていると、乃亜があたしのジャージをまたもちょっと引っ張った。
「あれ…?雅あそこ……神代先生―――来てる……」
え?水月が?
乃亜が指したほうに顔を向けると、
体育館の入り口で扉に背をもたれさせ、水月が立っていた。
腕を組んで、かたっぽの手を口元に当ててなにやら考え込んでるようなまなざしを、隣の男子コートに向けていた。
水月の視線を何となく追っていくと―――
久米の姿に行き着いた。



