HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




そんな感じで教室に向かうまで、あちこちでひそひそと噂話の的になったあたしたち。


手を繋いだまま教室に向かうと、教室内はざわついていた。


まぁ騒がしいD組だから、別に驚く程でもないけれど。


皆一様に前の黒板の方を注目していた。その大半が気味悪いものを見る目付きで、指さしたり、あとは面白がっているのかケータイの写メを撮ったり。


彼らの視線の先を辿ると、黒い黒板に貼られたシールの文字が目に飛び込んできた。



 ウラギリモノ
  ボクはオマエを許サナイ



その計り知れない憎悪の言葉が黒板に大きく書かれていた。その文字は赤い薔薇のシールで象られている。


あたしは誰か特殊な反応をする人物が居ないか教室の内側をぐるりと見渡した。態度は多種多様だけれど、全員一致するのが『気味悪い』の感情だった。


「裏切り者って?」


「許さないって書いてあるよ、何あれ、呪い的な?」


「ヤバくない?超気持ち悪いんですけど」


とあちこちでひそひそ声が聞こえる。


あたしが提案したことその2。


この薔薇のシールを知るのは犯人とその協力者だけ。


もちろんこの文字を貼った人間は知ってる。


協力者がこのクラスに居るのなら、動揺して何かしらアクションを起こすかもしれない。しかもかなりインパクトのある演出だ。狂った様な憎悪と悪意を感じる。


この文字は昨日、水月と保健医、それから梶にシールを買ってもらって、生徒の帰宅後に彼らに黒板に貼ってもらった。なかなか良い感じに貼られている。


あたしはすでに登校していた、教室の奥で喋っていた乃亜と梶の方を見ると二人とも無言で小さく頷き、目が合った瞬間あたしと久米も同時に頷いた。