てか久米、さっすが頭がいいな。
梶には通じない話題だ。
そんなくだらないことを話していると、久米は何が可笑しいのか一人明るく笑っている。その隣を無表情で同じように歩くあたし―――は、みんなの目にどう写っているのだろう。
正門まで数百メートルと言う場所で、流石に同じ高校の連中で溢れてきた。
「ねぇ!あれ久米くんじゃない!?」
「隣に居るの……鬼頭さんっ!?」
「うっそ!手繋いでるよ、あの二人付き合ってるの!」
「てかさー、ちょっと前に2-Aの生徒と久米くん喧嘩してたじゃん?あのとき久米くん鬼頭さんのこと好きとか言ってたよね」
「あー、あれはホントのことだったんかぁ」
早速あたしたちの様子を嗅ぎつけた女子たちがひそひそ。
今にも貧血で倒れそうな女子たちの嘆きを見事にスルーしながら久米は爽やかに笑っている。その近隣で
「あれ鬼頭じゃね!てか手繋いでるのまさかの久米!」
「うわっ!マジか!!ありえねぇ!」
「てか有り得るだろ、お似合い過ぎだ」
「俺の鬼頭さんを………久米、死ね…」
久米……あんた呪われそうだよ。何でそんな颯爽と攻撃をかわせるのさ。前は周りの一挙手一投足に敏感になっていたのに、随分図太く……いや、大人になった……
「鬼頭さん、ちゃんと笑ってよ。じゃないと変な目で見られるよ」と苦笑を浮かべ久米が予告もなくあたしの頬に手を伸ばしてきて、口角を引っ張り上げる。
前言撤回、やっぱ図太いの方だな。
「何すんだよ」
あたしはブレザーのポケットに手を入れたままの片手を出して久米の手を乱暴に払いながら睨む。
「だって不自然だろ?俺たち付き合ってるんだし」
そう……だけど
てか面白くもないのに笑えないっつうの。
でも、久米のパフォーマンスのおかげであたしが笑ってなくても
「キャー!!久米くんがっ!鬼頭さんのほっぺを!」とバタバタっと効果音を付けて女子たちが貧血を起こしそうなリアクションにちょっとほっ。
そのまま勘違いしていて欲しい。



