あたしは噂話をしてる他校の男子たちの方へ顏を向けると、彼らは一様に慌てて顔を逸らす。その人物たちの誰とも目が合わなかった。
目を細めて観察するも、その視線は『好奇』のもので、それ以上でもそれ以下でもない。
つまりストーカー犯の執着、或は執念深さを感じられなかった。
けれど、そう言う感情に振り回されない全くの第三者……首謀者だったら?
あたしは“それ”を見分けられるだろうか。
いや、ストーカーの犯行の片棒担いで、自ら絵図を描いた人間だ。何らかの感情があるに違いない。
嫉妬、愛情、怒り―――
何でもいい。とにかくそういう歪んだ感情が何かあったのなら…と思ったけれどそう簡単にはいかない、か。
諦めて前を向くと、久米も同じように前を向いていた。
ただ、人ゴミの中で繋がれた手だけが温かい。
ー俺が守るよ
そう言われた気がした。



