でも、例え水月があたしに久米の秘密を黙っていたとしても、それはそれ程痛手にはならない。


ちょっと前なら疑心暗鬼になっていたろうけど、今日の会議でその不安も払拭できた。


水月が何を考えようと、どう行動しようと、それはあたしを守るため―――




それを信じる。




「話してくれてありがと」


あたしは乃亜の肩をぽんぽんと叩くと、乃亜は安心したように胸を撫で下ろした。


――――

――


「でもさー、森本さんのお姉さんとどうして神代先生がそこまで仲良しなんだろ」


夕飯に作った牛丼を頬張りながら乃亜が不思議そうに首を傾け、でもすぐに


「やっぱ血は争えないって言うの?お姉さんも神代先生狙いなんじゃない?」とキっと目を吊り上げる。


「例え狙ってても、好きになるぐらいならいいんじゃない?」とあたしが気のない返事をかえすと


「お前、それでもいいんかよ、心配にならねぇのか?」


「そうだよー、神代先生んとこに送られてきたパールのピアスだってさ、二人がその話をするぐらい親密だったってことじゃない?普通そんな話する?だって生徒のお姉さんだよ」と箸の先で牛丼をつつきながら乃亜は呆れたように頬杖。


乃亜、行儀悪いよ。


「そんなことどっちでもいいよ」とあっさり言うと


「心配にならないの?神代先生が他の子にいっちゃうとか……」


「心配……?うーん…まぁ心配と言っちゃ心配だけど、でも実際あたしがこの目で見たわけでもないし。目にしたものしか信じられないタチだし(故に幽霊とかも信じてない)」


「まぁお前らしいっちゃらしいけどな」明良兄が苦笑いで、「あ、一味足りねぇ。雅取ってくれ」と明良兄の手が伸びてきて、それよりも早くあたしは一味の瓶を手にして明良兄の丼に振りかけた。


ちょっとのつもりが…


「おわっ!雅!!掛け過ぎだ!俺を殺す気か!」


明良兄の喚き声を聞いて、牛丼に目を向けると丼が真っ赤に染まっていた。


乃亜は呆れたように吐息をつき


「心配なんじゃん」


と一言。


頭ではわかってるんだけどね、心が追いつかないって言うか―――ね。