HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



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その日一日、あたしのケータイにストーカーから連絡はこなかった。


正体を掴んでやろうとしてるってのに、肝心なところで来ないんだから。


それともストーカーはやっぱり久米で、あたしが変に勘ぐってるから大人しくしてるとか?


分からないことに苛々しながら5時限目までやり過ごし、最後の6時限目は―――体育だった。


体育館に集合させられ、三分の一を占めるコートにはバレーのネットが張ってあった。


「6時限目で体育ってどうかしてるよね。面倒くさい」と体育座りをしながら乃亜が嘆いた。


今は小さなコートでバレーボールのミニゲームをやっている。


あたしたちのチームはもう終わって、他チームのゲームを大人しく見守っている最中。


「あ、ねぇ。隣のコート、男子はバスケみたいだね」と乃亜があたしのジャージをちょっと引っ張って向こう側のコートを眺めた。


「梶くんがんばって~♪」


「久米く~ん♪♪」


とすぐ近くで同じクラスの女子たちが自分たちのゲームそっちのけで黄色い声を上げている。


あたしも何となくそっちの方を見た。


バスケットボールが弾む音がして、シューズの音がキュッキュッと響いている。


どうやら梶と久米は同じチームみたいだ。


緑色のゼッケンを背中に貼り付けている。


「梶!」


クラスの男子が梶にボールを回した。


「おぅ!任せとけ!」


元気に言って梶がパスを受け取ると、梶は流れるようにゴールを決めた。


「「「キャ~~!梶くぅん♪」」」


女子たちの間で、一段と声援が高まり梶は照れくさそうにしてちょっとあたしの方を見てきた。