■Chairs.19



◇◇◇◇◇◇◇◇


“会議”を終えて解散したのち、あたしは保健医と梶に家に送ってもらって、帰り着いたところで勝手口から乃亜と明良兄を招き入れた。


明良兄が帰りのコンビニでパックのアイスティーとちょっとしたお菓子を買ってきてくれて、それらの入ったビニール袋をリビングのテーブルに置きながら、目を細めて足元に転がった保健医のボストンバッグを眺め


「なぁ、あのイケすかない保健医、今日もここに泊まるの?」と聞いてきて


「あいつは今日、水月の家に泊まらせる。千夏さんを危険にさらすわけにはいかないからね。だから今日はお兄と乃亜が一緒に居てくれると助かる」


と言うと「おうよ!任せておけ!」と単純なお兄は胸を叩く。さっきの敵対視モードはどこへやら。




「明日になったらその心配は無くなるけどね。まずは




内外から攻撃を仕掛ける」




あたしたちにはそれぞれ個々に大切なひとが居て、守りたいひとがいる。それを脅しのネタに利用しようなんて性根が腐っている。……と言いたいけれど、あたしだってストーカ―犯だったらそれを利用するだろう。


でもあたしは利用されると分かった時点で、それを逆に利用してやる。


その守りたいひと、大切にしているひとたちへの攻撃を避けるための次の一手は明日実行される。


あたしが目を細めると、二人は作戦の意味を理解している意味で小さく頷き合った。


「これで陰湿なストーカー犯を取っ捕まえられればいいんだけどな」


明良兄が腕を組み、太いため息。


「そう簡単にはシッポを掴まれないよ。実行犯単独だったら時間の問題だけど、その犯行を利用してる首謀者の意図が何なのか……それを知らなければ問題を断ち切れない」


「そうだよね……」乃亜が考え事をするかのように俯き


「大丈夫だって…俺がいるし、お前はもう久米…?て言うんだよな、アイツに協力する必要もないし」明良兄が乃亜の肩を抱き、乃亜は顏を上げた。


「ホントに大丈夫なんだろうかな……」その表情は不安で揺らいでいた。その表情を見てあたしは眉を寄せた。


「どうしたの?乃亜らしくない」


「……うん、何となく……」


「何となく、って何だよ」不安は伝染するのだろうか、明良兄も同じように自信無さそうに眉を下げる。


「……雅、さっきさ…」乃亜は言いかけたけれど、結局次の言葉を飲み込んだ。




何―――……