改めて―――僕は久米とまっすぐに対峙した。


久米はさっきの射るような目を僕に向けてきて


「どうして言わなかったんですか」


と開口一番に聞いていた。


「何を?」とわざわざ聞かずとも分かっている。


久米はまっすぐに僕を見据えてくる。まばたきもせずにその真っ黒の二つの水晶体が僕を捉えて離さない。


「もう俺には手札がない。だから先生も俺の秘密をバラすことができたのに何故―――」


その視線に本当のことをすべて話しそうになる。


けれど僕はまたも小さな嘘をついた。


「右門 篤史との“約束”がある。君に手札はなくとも彼にはまだあるかもしれない」


嘘―――と言うよりも虚栄だ。


久米の言った通り彼に手札がないのは明らかだ。けれど僕がそこまで隠し通そうとするのは僕自身のためだろうか―――


それとも久米の―――……


「はっ!」


久米は吐き捨てるように笑って腕を組むと


「どこまでお人よしなんだか」と声を立てて笑った。だけど次の瞬間急に冷めた顔つきになり声を低めて


「それとも同情?」


と低く聞いてきた。


「断じて言うが同情なんかじゃない。僕は右門 篤史の取引だけしか考えていない」


正直に自分の気持ちを打ち明けると、久米は顏を歪ませた。同情のような嘲笑のような、複雑な表情を浮かべている。


「アツにその作戦を伝えたのは俺だよ、先生。


俺の“秘密”を誰にも知られない為。アツがそう取引を持ちかけると、先生は絶対秘密を口外しない、取引の為に。


でも鬼頭さんがあのメンバーを招集したのは予想外のことだった。カードはオープンになったから、アツが知ってる新しいことなんて無い。


先生のやってることは意味がないんだ」


そう―――……確かに、意味なんてないかもしれない。それに、ここにきてまで隠し事をするのはやはり後ろめたいことだ。それなのに僕は―――言わなかった。


「君は何故そこまでして“秘密”を隠し通すんだ。


全部みんなに打ち明けて、協力してもらう方が君にとって安全じゃないか」


「安全かそうじゃないか、は俺が判断する。それに少しでも俺の秘密を知る人間は作りたくない。それが味方であっても―――」


久米は吐き捨てるようにわざとらしく冷たく言い放ったが、その言葉の裏に



雅を守るための嘘だと気付いた。