HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



久米は色んなことが初耳だったのか、寝耳に水と言った感じで驚きを隠せないようにひたすらに大きな目をぱちぱちとしばたかせている。


「まさか―――……先生たちのところまで…及んでいたとはね」


自嘲じみて口の端で強引に笑うと久米は前髪をぐしゃりと掻き揚げた。


楠も口元に手を当て大きく目を開いている。


返す言葉がはないようで、不安そうにカードや手紙と雅の間で視線をいったりきたりさせている。


それでも雅が大した説明をしなくても、二人はその状況をいち早く読み取ったようだ。


久米と楠は顔を合わせて、やがて久米の方が口を開いた。




「タイミング的に―――これを置いた犯人は近くに居る―――ってこと……?」




「そうゆうこと。話しは早いじゃん」


雅が腕を組んだままカードを久米から奪い、軽く掲げる。


「だからこの場を設けたんだよ。わざわざこんな目立つ場所であたしたちが作戦会議をしている―――って知ったら


その“協力者”がどうでるか―――その反応が見たかった。


幸いにも防音が施されてるからさすがに会話の内容まで聞こえないだろうけどね」



雅はカードをまこに返して


「そ。その作戦を俺と鬼頭とで考えて俺がメールを回した。


容疑者は四十人弱ってところだな。



だけど四十人弱が俺たちのこのメンバーでここを利用していることを知った」後をまこが引き継いだ。


そう


僕たちがわざと大きな声でこの教室を使うことを知らせたのは、犯人の出方を見るためだ。


四十人弱の―――生徒たちの中に―――犯人は居る。



雅は手紙をテーブルに置くと目を細めた。


今や誰もが口を閉ざし、彼女の次の言葉を待っている状況だ。


その静かな沈黙の中、まるで審判を下すように雅が口を開いた。







「この件はストーカー犯のほかに手紙を置いて脅す実行犯、そしてその裏にその作戦を考えられるだけの頭脳を持つもう一人の協力者―――



計三人は居るってこと」