HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




久米は手紙を読んでその内容に目を開いた。


「ごめん、あたしが勝手にあんたの下駄箱から盗んだ」


“盗んだ”とハッキリと言い切り雅が淡々と言った。全然謝ってる態度じゃないが、この際どうだっていい。


いや、誰もその事実を気にしていないと言った方が正しいのか。


「問題は、手紙の内容云々より―――そのシールが二年前も同じくストーカー犯が久米に警告してきたものと同じだった


ってことだよ」


雅の説明に今度は僕たち……僕とまこ、それから梶田が三人で顔を合わせた。


「頭の良い犯人だね。その手紙で今回の件と同一犯……そして犯人が一人だと思わせる。


でも犯人は誰があたしの彼氏かまだ知らない筈。だからこんな手あたり次第な強引な方法を取ってきたんだよ」


雅が言うと


楠は兄の方を見上げて「明良のところには?」と聞いた。


「俺んとこにはまだ……」楠 明良が口元に手を当てたままかぶりを振る。


「そのうち届くかもね。


悪魔からのラブレターだよ」



悪魔からのラブレター……か。


まさしくそうだ。手紙を受け取った誰もが何らかの精神的苦痛を受けている。


僕たちを追いつめるのには効果覿面だ。


でもまこを脅すときは珍しく犯人はミスを犯した。


それがトランプを使う、と言う強引な手段を選んだからだ。


久米の下駄箱の件だけならまだしも二回も不自然な状況が続くと、さすがに協力者説を払拭できなくなる。


まぁこちらとしては助かったけど。