久米は―――手紙のことを知らされていなかったようだ。
雅が人差し指と中指で挟んだ白い封筒を軽く掲げ、
「それ………」
久米が抑揚の欠いた声でその白い封筒を指さし。
「それと同じシールの貼られた、まぁ手紙じゃねぇけどな
警告文が俺んとこにきた」
まこがトランプのカードを机に滑らせ、
「僕も脅迫文が学校宛に届いた」
僕も受け取った手紙を取り出し、同じように机に並べた。
雅はまこのトランプのカードを手にとり、険しい表情でその一枚を睨んだ。
そして無言で久米に手渡すと、久米も一瞬だけ目を開いた。
「警告文は、その日の午前中に保健室でゲームをやってた生徒から取り上げたものだ。
その時点では恐らく何も書かれていなかっただろう。何か書いてあったらゲームをやってる生徒が気付くはずだ。
そして俺が取り上げ、机の中にそのままになっていたが、昼休みに取り出したときその文字が書かれていた」
「こっちは手書きだけど、こっちは新聞紙の切り抜きだ」
久米はまこのカードと僕の手紙を見比べて
「時間が無かったんだろうな。いかにも慌てて書きましたーって感じじゃね?」
楠 明良も同じように見比べる。
みんな考えることは一緒のようだ。
僕はまこと顔を合わせた。そして梶田にも目配せすると梶田もぎこちなく頷いた。
あの手紙だ―――
薔薇のシールの貼られた手紙。
あの手紙は悪意に満ちていたが、そこに鍵が隠されている気がする。



