「とまぁ事件の大筋の概要はこんな感じだよ。
他に何か質問や意見があったら言って」
雅が手を叩き、一同を見渡したが意見や質問を投げかけられるほどみんな事実に追いつけていないと言う感じだ。
「OK。じゃぁ次へ行こう」
雅はまたも軽く手を叩き先を急ぐ。
一人一人の理解を得ている時間は無さそうだ。だが全員は誰も反論せず雅の意見に顔を上げた。
「ここまでの話だと、ストーカー犯は幼稚で稚拙。さらには短気で執拗で陰険な性格をしている者の犯行。
これは言うまでもなく右門武史一人の単独犯だと思われるケド、
久米の下駄箱に入っていた手紙のことを考えると、この学内で
実行犯がもう一人」
雅の言葉を聞き全員が同じように目を開いて息を飲み込んだ。
雅のその言葉に、意見したのは楠だった。おずおずと手を挙げ、片方の手を口元に当てたまま
「ちょっと待って……今イチ理解できてないんだけど……
ストーカー犯は単独じゃないの?」
手紙のことをまったく知らされていなかった楠が大きな目をまばたき何故だか楠 明良を見上げたが、楠 明良は手紙の存在を知っていたのか
雅の話にそれほど動じた様子を見せなかった。
そして楠 乃亜と同じく―――それでもこちらはいくらか真剣な顔で目をいっぱいに広げていたのは久米だ。



