「危険なことだと思ったよ。だけどこの作戦は犯人をおびき出すだけではなく、久米と乃亜…さらには右門 篤史がつるんでいる証拠も掴めたんだ。
作戦はうまくいってた」
「でも逃げられた。あいつ足速ぇえよ」
梶がくやしそうに歯軋りをして
「この場合足の速さじゃなく土地勘の問題だね。どこの裏道を通るとどこに出るのか犯人は熟知している」
「話を折って悪いが、その右門 篤史てヤツが犯人じゃないのか?」
まこが聞いて、雅はゆるゆると首を横に振った。
「右門 篤史て俺…中学が一緒だった。学年は違うけど、議員の息子だか何だかで有名だったぜ。
でも本人は暗い感じで…目立たなかったな。
まぁストーカーしそうと言えばそうかもしれねぇけど…」
こう言ったのは楠 明良だ。
「俺はその兄貴と同じ高校だったな。俺んときも学年はかぶってなくて、俺が三年のときヤツは一年だった。
おとーとは違って議員の父親をカサにやりたい放題。
いけすかないヤツだったぜ。こっちはストーカーしそうな根暗なヤツではなかった感じ。
欲しいものは強引にでも手に入れる傲慢なタイプだ」
まこも思い出したように言って
「ホントに兄弟なのか?」と梶田が疑うように目を細める。
「兄弟だよ、ただし母親違いの兄弟だ」
そう答えたのは久米。
「アツ……楠先輩が知ってる右門 篤史…弟の方は右門議員の本妻の息子じゃない。
父親はデキも素行も悪い兄を跡取りにすることを渋って、妾腹に産ませたアツを引き取ったんだ。
二年前の事件も、今回の事件も
アツが犯人じゃない。
アツの兄貴、右門 武史(ミギカド タケシ)」



