「ホントなのかよ、久米っ!何で今まで黙ってたんだよ!」
梶田が勢い込み、久米の胸倉を掴んだが久米は何かを反論することなく無表情で梶田を見据えていた。
こんなときでもどこか余裕を漂わせている久米が気に入らないのか
「何とか言えよ!」梶田がさらに詰め寄ると、それを雅が制した。
「梶、言わなきゃいけない義務はない。今までも、今も…これからも」
「でも鬼頭っ!こいつが早く名乗ってくれれば話はもっと簡単だったろ!」
「もっと複雑になったかもしれない」
まこが腕を組みながら冷静に発言し、
「梶、あたしを心配してくれるのは分かる。けど久米も久米の考えがあったし、こいつも傷を負っている」
雅が久米と梶田の間に割って入り、両者の間を引き離すように両手を軽く挙げた。
「その傷の逆恨みで雅をつけまわしてたんじゃないか?
タイミング的に見てこいつが転校してきときからストーカー犯につけねらわれるようになったんじゃねぇか」
楠 明良も雅の言葉に納得していない様子で席を立ち上がり、
「久米が現れたからストーカーが現れたのか、それともストーカーの犯罪がエスカレートしてって久米が現れたのか、
タイミングは同じだけど、この順番は重要で意味が大きく違ってくる」
僕が楠 明良の肩に手を置いて彼をなだめるように説明すると、久米は驚いたように僕を見つめてきた。
「まさか先生に庇われる日が来るとはね」
「久米、君のやり方は正しいとは言えないが、今は僕たちが対立してる場合じゃない。
じゃないと危険を顧みずこの場を設けた意味がない」
僕が真剣に言うと、久米は小さく吐息をつき
やがては諦めたように梶田と楠 明良を眺めた。
「先生の言う通り、ストーカーはもうずっと前から鬼頭さんを狙っていた。
はっきりとした期間は分からないけど俺が転校する二ヶ月前ぐらいからだ」
「その情報はどこで仕入れた」
まこが聞き、
「その話はあと。まずは流れを整理するのが先」
雅がまこを見据え、まこは軽く肩をすくめた。



