HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




視聴覚室の前方には大きなホワイトボードが掛かっていて、雅はボード用のマジックを手に取ると


「知っての通り、ここに集まってくれたのは


あたしがストーカーされている件に関して」


確認する意味で雅が全員を見渡すと、誰もそれに頷かなかったが、誰もがわかりきっていたことで口元を引き締めた表情はみな固かった。



「言いたくないこと聞かれたくないことなら聞かないし問いたださない。


意見や質問は受け入れるけど、発言に嘘はつかないで。


ここでのルールはそれだけ」




短く説明されて全員が探るように顔を見合わせて、やがて小さく頷いた。



「OK。じゃぁここで一旦事態を整理する必要がある。


事の発端は二年前」


20XX年10月と言う日付を書いて、


「この頃あたしはストーカーに狙われていた。当時のことを乃亜も明良兄も知ってる。




そして久米―――」


全員の視線が久米に集中し、久米はちょっとだけ居心地悪そうに肩をすくめた。




「久米は、当時のクラスメイトだった。ストーカー傷害事件のショックであたしは久米の存在を忘れ、


久米は犯人に



右手に怪我を負わされた」






「そう―――だったのか…?」


梶田が目を開いて久米を眺め、同じような反応をしたのは楠 明良だけだった。