HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~



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靴箱を開ける。


だけど今日は上履き以外何も入っていなかった。


そのことにほっとしていると、


「おはよ~♪」乃亜の明るい声がして、あたしはのろのろと顔を上げた。


「顔色悪いね。寝不足??」意味深に笑って乃亜も靴箱に手を掛ける。


「ううん。生理が来そうなんだ。おなかとか腰とか痛いし」


予定日はあと二日ほどだ。でも最近不規則だからこの調子ならもっと早く来るかもしれない。


だからだ。


気持ちが不安定になってるから変な夢も見るし、変な幻覚も見えた…


そう説明するのが一番納得がいく。


「あー面倒くさいよね。あたしも重い方だから。ニキビとか出来るし、苛々して明良に当たっちゃう」


「仲良くしなよ」そう返して、「ね、乃亜は生理前に幻覚とか見たことある?」とちょっと聞いてみた。そのときだった…


「おはよう」


朝から憎らしいほど爽やかな久米の声が聞こえて、あたしたちは揃って顔を上げた。


「鬼頭さん顔色悪いね。風邪?」久米は靴箱を開けながら、あたしを心配そうに見てきた。


あたしはその瞳をまっすぐに見返して、


「ううん、寝不足。夢見が悪くて」と返した。