僕は目を開き、その転がり出たパールのピアスを凝視していた。
トン…
廊下の奥で足音が聞こえ、反射的に振り向くと―――
森本が何かの参考書を抱え、遠くで僕の方をじっと見ていた。
森本……
絶妙なタイミングだ。
もはや偶然なんかでは片付けられるレベルではない。
僕は彼女と対峙して、やがて彼女の方へ歩み寄った。
森本は僕が彼女に近づいていってもそこから去る様子はない。
「どうした?職員室に用かい?」
なるべく平静を装って聞くと、森本は無表情のまま僕を見上げた。
こないだ廊下で倒れていたときのように顔色が悪く見える。
「……いえ」
森本は参考書を抱えなおし、
「先生に少し……相談したいことが…」
彼女は耳に掛かった髪をそっと掻き揚げた。
ふわり、と香ってきたのはヒプノティックプアゾンの香り。
そして白い耳たぶの先端に見えたのは
パールのピアス。
僕は彼女が次の言葉を述べる前より早く、彼女の腕を掴んでいた。



