―――「第二視聴覚室の鍵をお借りしていいですか?」
キーボックスから“第二視聴覚室”の鍵を抜き取り、教頭先生に確認すると
「何に使用するのですか?」
と初老でちょっとばかり神経質そうな教頭先生がメガネのブリッジをあげながら聞いてきた。
「文化祭の劇の練習をするみたいです。練習場所がなくて。
僕が監督してますので」
用意していた嘘を並べるとよっぽど信頼されているのか、それとも諦められているのか
「ああ、なるほど。がんばってくださいね」
とさっきからの神経質そうな顔から一転にっこり微笑まれた。
視聴覚室の鍵を手に入れることはできた。
あとはこれで“彼ら”を招き入れれば“僕の任務”は終わりだ。
教頭先生に嘘をついたことになるから、ちょっとばかりドキドキした面持ちで職員室をあとにしようとしていると
「神代先生」
教頭先生に呼び止められ、ぎくり、として思わず僕は足取りを止めた。
コツコツ…
教頭先生の靴音がやけに大きく聞こえ、その場で振り向くこともできず僕は固まった。
ドキン、ドキン!と高鳴る鼓動を押さえている僕の肩に教頭先生の手が置かれた。
「神代先生、くれぐれも―――D組で問題を起こさないよう、しっかり監督しておいてくださいよ」
教頭先生は問題児たちが集まるクラスが何かやらかすかと心配しているで
「だ、大丈夫です!僕が見てますので」
僕は無理やり笑顔を作り、彼の手から逃れるとそそくさと職員室を飛び出た。
はぁ~
誰かに嘘をつくってのはやっぱり心苦しい。
「ごめんなさい、教頭先生」
僕は小さく謝り、廊下を急いだ。



