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次の日、授業は滞りなく行われた。
リレーメールを受け取ったのは梶田と楠、久米と楠 明良。
僕のクラスで首謀者の雅と受け取った生徒は何事もなく日常を送っている……ように思えた。
久米はやたらと親しそうに雅に話しかけているし、雅はけだるそうにそれに相槌を打っている。
楠と梶田はその二人を気にしているようにちらりちらりと二人に視線を送り、
久米は僕を見ても相変わらず飄々とした態度―――
変わりない日常だ。
いや、これは壊れかけた僕たちの世界のなれの果てだ。
事実を捻じ曲げられ、誰もが嘘と疑惑に満ちた―――歪んだ世界。
僕にはこの光景がかの有名なダリの時計の世界に見えた。
コチコチコチ…
教室の壁に取り付けられた時計が秒針の音を鳴らし、普段も聞こえているであろう音を改めて感じ取ることができた。
歪んだ時が今、正しい時間へと戻ろうとしているように思えた。
僕たちの時間を戻すことはできないけれど、それすらも記憶に変え新しい未来へと導いているように思える。
それには僕たちの一つ一つの働きが必要なのだ。
帰りのホームルームを終えて、それぞれが帰る支度や文化祭の準備に取り掛かる中
「先生、第二視聴覚室って今使えますか?」
久米が教室中に聞こえる声で聞いてきた。
打ち合わせの内で、関係者以外は不思議そうな顔つきをしている。
僕は生徒たちの表情を眺めて、誰か不審な動きをする者がいないか目を凝らしたが、誰も普段通りの反応に見えた。
「大丈夫だと思うよ。文化祭の打ち合わせかい?」
僕が打ち合わせ通り聞くと
「劇のリハを……主役である鬼頭さんと楠さんの台詞をもう一度考え直そうかと」
雅と楠はこれまた打ち合わせ通り顔を見合わせ、
「分かった。鍵を借りてくるから視聴覚室の前で」
僕は文化祭を盛り上げようとする生徒を応援する教師を演じて、教室をあとにした。



