電話の向こうで息を呑む気配があった。


数秒のち一拍遅れで


『雅―――……!』


彼があたしを呼んでくれた。






『雅、僕もだ、僕も君を―――』





最後まで聞かずして


「ぅおーい、飯できたぞ~!」


最悪のタイミングで能天気な保健医の声が聞こえてきた。


開け放たれた自室のドアを軽くノックして保健医が現れ、あたしたちの電話の中での短い逢瀬は終わりを告げられた。


『まこの……声…?』


水月の声が一瞬でくぐもり、


あたしは思わず額に手をやった。


何て間が悪い。


「わけあって保健医がうちに来てるの。明日説明する。


放課後、第二視聴覚室で」


これ以上は今は何も言えない。たとえ何か言ったとしてもすべて言い訳に聞こえそうだったし。


あたしは短く説明すると


『放課後、第二視聴覚室で?』


水月は復唱しながら聞いてきた。







「待ってる」







最後に一言だけ言ってあたしは今度こそ通話を切った。