結局あたしは自らその着メロを断ち切った。
通話を切ったわけじゃなく、彼の電話に応えることにした。
何から切り出して良いのか分からず心臓を押さえながらも深呼吸。
かろうじて言えたのは、久しぶりの(元)恋人からの電話なのに
「…もしもし?」とぶっきらぼうに答えるしかできなかった。
『あれ!?あ…えっと……まこのケータイに掛けたつもりなんだけど…』
水月が慌てる。この慌て方からすると取り繕った嘘でもなさそうだ。
てか相変わらずどっか抜けてる。
確認しようよ、掛ける前にさぁ。
要らない期待
しちゃうじゃん。
「保健医に?これはあたしのケータイだよ」
少しの間、間があって。妙な沈黙に堪えきれず
「間違い電話。相変わらずだね」
強引に笑った。
「相変わらずおっちょこちょい」
そんなところも
好き。
あたしたちは…あたしたちの間には絆があるのだろうか。
もし水月が無意識に掛けてくれたのなら、まだあなたの心の中深くにあたしはいるのかな。
あたしの席はまだ残っているのかな。
誰か違う人がその椅子に座ることが―――あるのだろうか。
そんなことを考えながら
「早く保健医に掛けなおしたら?」
ひどく切なくて胸が締め付けられるように苦しかったけれど、あたしは耳からケータイを遠ざけようとした。
『いや!君でもいいんだ。
あの……コンタクト…!』
「コンタクト?」
教師のくせして、あたしの前ではトキドキ的を得ない切り口上をする。
そんな不器用なところも可愛い。



