まだブツブツ言いながらも大人しくキッチンに向かう保健医を見送り、あたしは自室がある二階へと足を運んだ。
あたしの部屋から―――乃亜の部屋の窓が見える。
乃亜の部屋の明かりはついていて、淡いカーテンの向こう側にぼんやりとシルエットが映し出されていた。
乃亜―――……
そっと自分の部屋の窓に手を乗せると
~♪
電源を入れたケータイから突如着信音が鳴り響き、ドキリとした。
さっきまで打倒ストーカー犯と意気込んでいたのに、やっぱりその場に直面すると僅かに緊張する。
ドキンドキン…と心臓が鳴るのを何とか宥めてケータイを手に取ると
着信:水月
となっていてあたしは目を開いた。
なん―――で……
まさか保健医がメールしたとか?
ううん、あいつは今キッチンで何かを作ってる最中だし…と言うことは別件で?
ストーカー犯より緊張した面持ちでその画面を凝視する。
メロディーの節が途切れるたびに、着信音が途切れたのかと思ってドキリとする。
あたしは―――
心の奥底でこのメロディーが途切れないことを祈っている。
どんな小さなことでもいい。どんなくだらないことでもいい。
彼があたしに電話をしてくれてる。
突き放したはずの大好きな人が―――



