HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




たった七名の舞台のストーリーを保健医に聞かせると、彼はあたしの一言一言に頷いてくれた。


――――


「……こうゆうわけだから」


組み立てたショートストーリーを聞かせると、


「なるほどね」保健医は顎に手をやって小さく頷いた。「うまくいきそうな気がする」


「うまく行くかどうかは先生たちの演技次第だよ。


このことみんなに知らせるから」


あたしはケータイを取り出してメール画面を開いた。


「待て、一斉送信するつもりだろ?お前からのアドレスだと不審がるヤツもいるかもしれねぇ。


俺が送信するから、お前は飯でも作ってろ」


ありがたいことだけど…


「てかあんたマジでうちに泊まってくつもり?」


「俺はいつだってマジだ。飯作れ」


「居候のくせに生意気。あんたが作ってよ。二日だけなら宿代にしてあげる」


「二日だけかよ。お前水月と俺との態度ずいぶん違くね?」


「当たり前だよ、あんたにお愛想振りまけるほど器用じゃないの」


言ってやると、


「まぁお前に愛想振りまかれてもキモいだけだけどな」


キモい言うな。


「で?作るの作らないの?


作らないなら今すぐ帰って」


ボストンバッグを掲げて玄関口へ促すと


「分かった分かった!」


保健医は慌ててバッグを奪い返し、


「俺……お前とだけはぜってぇ“間違い”なんてないわ」


と言い切った。


あたしだってあんたと"間違い”なんて金積まれてもごめんだね。



と言うわけで、あたしたちの奇妙な共同生活がはじまった。