HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




テーブルに放り投げられたのは、一枚のトランプカードだった。



“Joker”のカード。


黒いピエロのシルエットのイラストに赤い薔薇のシールが貼ってある。


「これ……」


久米の下駄箱に入っていたあの薄気味悪い手紙に貼られていたシールと同じ。


さらにはカードの紙面に走るのは


『鬼頭 雅に関わるな』


と言う赤い文字。


「どうしたの、これ…」


思わず保健医を見ると、保健医は鬱陶しそうにカードをひっくり返した。


「さぁね、ゲームやってた生徒から取り上げたもんだけど、俺が不在のときに誰かが書きやがった」



カードの表には保健医の婚約者、 千夏さんの写真が貼り付けてあった。


隠し撮りだろう…千夏さんはカメラ目線じゃなく何かの扉を開いている…か閉じているところだ。


「これ…先生のマンション…」


「よく分かったな、そうだよ。俺のマンションの俺の部屋の前だ。


今や千夏もターゲットの一人だ。俺は千夏を実家に避難させて


俺もしばらく様子見であの場所には近づかないようにする」



ストーカー犯はあたしに関わる全ての人間を遠ざけようとしている。


まさか千夏さんにまで手が伸びるとは―――


そこまでは考えが及ばなかった。


あたしは親指の爪を噛んでカードを睨んだ。


何としてでも千夏さんを巻き込むことだけは防がなきゃ。




「賢明な判断だね。


あたしと関わるとロクなことにならない。


今すぐ手を引いた方がいいよ」


あたしはそっけなく言ってトランプのカードを保健医につき返して再び玄関の方を顎でしゃくった。


「お前も梶田と同じようなこと言うんだな」


保健医はカードを手に持ち、あたしを横目で見てくる。





梶――――……?