強く抱きしめられて、あたしは抵抗することもせず大人しく久米の胸の中、ゆっくりと目を閉じた。
あたしの知ってる美術バカの…油絵の匂いはしなかった。
代わりに柔軟剤と僅かな香水の香り―――…
保健医と似た香りだけど、どこか違う…
それは
二年前にはもう戻れない。
あたしたちは違う道を歩くことになったんだ。
そう物語っていたのに、でも…
二年前の美術室…久米の告白に応えていればこうなっていたんだろう未来をこの瞬間感じ取った。
「あの事件がなかったら…俺たちはこうして“ごっこ”じゃなくホンモノの恋人になれたんだろうか」
久米があたしの頭を抱き、そっと呟いた。
あたしが考えていたこと、久米も考えてたんだね。
「さぁ…わかんないよ。あたし預言者じゃないし」
「はは…」
久米は乾いた声で笑って、
「相変わらずだなぁ。君は何も変っちゃいない」
久米はあたしの髪をそっと撫でた。
「すっごいロマンチックなところなのに…俺はいつも君の言葉であと一歩を踏み出せないんだ」
「何、あんたあたしがロマンチックじゃないって言いたいわけ?」
「まぁそうかな。こっちは最上級にキメてるつもりなのに、君にはどうしても伝わらないみたいだ」
「キザなのとか嫌い」
はっきりきっぱり言ってやると
「そうゆうはっきりしてるとこも
好きだ」
久米はあたしの顔を僅かに引き離すとあたしの顔に近づいてきた。



