HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~




あたしは久米からそっと手を離し、


「そろそろ行く。日も暮れるし」


わざとそっけなく言って今度こそ扉を開けた。


久米もそれを阻まなかった。



――――






「わざわざ送ってくれなくていいのに」


家の前まで律儀に送り届けてくれた久米を見上げると


「危ないし。鬼頭さんは狙われてるし……」


そこまで言ってちょっと目を逸らす久米。


「……半分はそうゆう理由だけど…半分は…まだ一緒に居たかったからって…まぁ不純な動機だけど」


「ありがと」


後半部分を聞かなかったことにして素直にお礼を言うと、久米は名残惜しそうに家を見上げそれでもすぐに思い直したのか


「じゃ、俺帰るよ。また明日」


軽く手を挙げて来た道を引き返そうとする。


「また明日、学校で」


久米の背中に向かって手を挙げ、


「……久米…」


あたしは彼の背中に向かってなぜか声を掛けていた。


何で…?


どうして今更、何を話すって言うんだよ。


久米はあたしの呼びかけに気づかずどんどん遠ざかっていく。


「久米…」


あたしはもう一度呼びかけた。それでも小さな問いかけは久米に届かない。


久米…





「とーや!」





思い切り叫ぶと、久米はようやく気付き、目を開いて立ち止まった。