「蛍光緑が好きなわけじゃないよ。好きな色は
スノーホワイト」
スノーホワイト…?
「鬼頭さんの肌の色みたいな白い色、カラーコードは#FFFAFA」
真剣に顔を覗き込まれて、あたしは唇を引き結んだ。
「マニアックだね」
そうチャラけて答えるのが精一杯。
久米に油断してはならない。
どうやったのか分からないけど乃亜を誘い、あたしを騙した男。
水月から引き剥がして、あたしたちの仲を裂いた。
でも
いつもあたしを助けてくれた。
危険だと分かっていても身を挺してあたしを守ってくれた。
「美術バカ」
そっと昔の呼び名を口にすると、久米は目を上げまばたきをした。
「何かさ、照れるじゃん?」
「照れ……え??鬼頭さんが?」
久米は本気でびっくりしたように目をまばたきして、あたしは冗談で久米のおなかにパンチを入れるフリ。
「何それ、あたしが照れたら嵐でも起こるっての?」
ちょっと呆れたように目を細めると、久米は苦笑い。
「いや、ちょっと想像できなかっただけ」
「照れるよ。
だって二年前のあんたとは全然違って、背も伸びたし声も違う。
全然違う男の子が目の前にいて、でも中身はあたしの知ってる美術バカだもん。
そんなあんたからはっずかしい台詞聞いたら戸惑うのは当たり前だよ。
さっすがゲキ部」
すぐ間近に迫った久米の体を押し戻そうと肩に手を置いたけれど、久米はその手を掴み
「俺はちょっと違うかな」
久米はあたしの手を掴んだままさらに一歩あたしに近づいてきた。



