右門 篤史とどう接触したのか、二人の関係を知ってから会話は途切れ、
あたしたちは黙ってコーヒーを飲み、これといって何をするわけでもなく
「そろそろ帰る?」
と久米が言い出したとき、少しだけほっとしたのは事実。
水月と二人きりで部屋にいるとき、あたしは大抵ゆずと遊んだり、彼の借りてきたホラー映画を一緒に観たり
テンションが高いときは二人であゆを聴いて、ライブごっこみたいなものもした。
プロレスごっこもした。(絶対あたしが勝つけど)
……
今思えば…学校にいるときのあたしと水月を知ってる人たちは、想像もできないよね。
水月は爽やかで優しい人気の数学教師、一方は問題ばかり起こす問題児。
でも
二人であの小さなマンションにいるときは、どんな時間でも何をやっていても楽しかった。
あたしも水月も子供みたいにはしゃいでたくさん笑った。
怒ったこともあるけれどすぐに仲直り。
時間はあっという間に過ぎていき、彼の腕の中で目が覚めると少しだけ寂しいの。
朝がきた。一日がはじまる。
あたしたちは
『教師と生徒』に戻っちゃうって。
玄関先でちょっと俯いて靴を履いていると
「………ごめん…
色々気が利かなくて」
久米も靴を履きながら、あたしから顔を逸らして首の後ろに手をやった。



