「HPを設立して一年…長かったよ。
毎日毎晩、新しい書き込みがないか、と。来る奴来る奴は気まぐれのひやかしを楽しむ連中ばかり。
気が遠くなりそうな一年だった」
「粘った甲斐あったね。
でも右門 篤史は何で二年間黙って服役して、出所後あんたに接触してきたの?
冤罪が許せないのなら、もう一度立件することだって不可能じゃなかったはず。
そもそもなんで大人しく少年院に服役したのよ」
久米はノートパソコンを閉じてパソコンデスクの椅子を回転させながらあたしに向き直った。
「色々複雑なんだよ。事情があってね。
そのことは話すつもりだけど、アツ個人に関わることだから今は俺の口から説明できない」
「ふーん」
あたしは喉の奥で不服そうに頷いたけれど、久米がそう言うなら今はこれ以上聞けない。
久米と右門 篤史の関係は大体分かった。
でも
大半はまだ謎に包まれたままだ。
いくらあたしが久米のことを美術バカだと思い出しても、こいつがすぐにあたしに手の内をバラすとは思えなかった。
まだまだ二人には隠されてることが多いはず。
だからあたしも手の内のカードを全て見せるわけにはいかない。
あたしも美術バカを……いいや、久米を100%信用できてはいないのだ。



