簡素な文章だったけれど、丁寧で品を感じさせる。
それに
蛍光緑のエルモ―――あたしが顔色が悪いって指摘したエルモだ。
「新聞には事件の概要は詳しく書かれていなかった。
ただ、中学二年の少年が怪我を負った、とだけ。“右手”とは一言も。
それにあのエルモをケータイにはじめて付けたのはあの裁判の日がはじめてだったんだ。
このAと名乗る人間がアツ以外の誰でもないことに気付いた。
そのストラップは一ヶ月ほど前に家族旅行して、そのとき買ったまま放置されてて
……単にどこに置いたか忘れてただけなんだけどね」
「出たよ、あんたの忘れ癖。あんたどっか病気なんじゃないの?」
冗談ぽく言ってやると
「そうかも」と久米は頬を緩めた。
ピリピリした空気が一瞬だけ和んだ。
「でもそのお陰で、彼が俺の探していたアツだと気付いた。
すぐにPCのフリーメール……捨てアドの一つにメールをしてもらうよう依頼して、HPにロックを掛けた。
Aはすぐに俺のアドレスにメールをくれたよ。彼も同じ気持ちだったと言っていた。
再犯の可能性が高く、それ以外にも自分を冤罪で少年院に送った真犯人が憎い、と。
俺の読み通り、Aはアツ…
右門 篤史だった。
それ以降、このHPは半分閉鎖状態を保っている」
なるほど―――
考えたものだ。
恐らく久米は最初からこのHP自体も捨てHPとして作ったのだろう。
右門 篤史を探すためだけに。
真のストーカー犯の再犯を防ぐため。
あたしを守るため―――



