重ねた手の感触を確認するような意味でか、久米が手のひらを返してそっとあたしの指を握る。


温かい手だった。


ううん…いっそ熱い…て言えるぐらい。


それが怒りと言う感情の昂ぶりであることを、僅かに震えている久米の指先から感じ取れた。


「だが俺はストーカー事件はここで終わるとは思わなかった。


捕まったのは違う人物。


と言うことは、また君が狙われる可能性は非常に高いと考えたからだ。


だからHPを作ってアツを探した。


アツなら真犯人を知っている。




一年ほど掛かったよ」



BBSにはたくさんの書き込みが書かれていた。


そのどれもが明らかにふざけて書かれたものが多かった。


“俺が犯人だ!”と名乗る者や、“いついつに誰かを殺す”なんて予告の書き込みも。


中には


“その狙われた女知ってるよ。超可愛かった。俺もストーカーしてぇ”とか


“拉致監禁してヤりまくろうぜ”とか。


「心ない書き込みを最初は削除してたけど、キリがないことに気付いた。



失せろ、ゲス共―――」



久米の左手の下でマウスがギリギリ音を立てた。


「…て感じで、もう最後の方は諦めかけてたけど」


久米は無理やり笑ってあたしを見上げる。


「閉鎖しようとしていたときだった。


ある日掲示板に新着のメッセージが届いた。


内容はこれだ」




名前:A

   こんにちは。はじめまして、と言うべきですか。
   いえ、僕はあなたと一度会っているからはじめましてじゃないですね。
   “右手”の調子はいかがですか?
   あなたの“蛍光緑のエルモ”印象的でした。