「あれは冤罪だ。
実際にストーカーして俺や鬼頭さんにナイフを向けたのは別人」
久米は画面を睨むように視線を険しくさせて画面をスクロールさせる。
え―――……?
「…ちょっと待って。
じゃぁ何でその掴まったヤツは『やってない』て言わなかったの。
何で大人しく服役したの。
警察だって調べれば分かるじゃん」
てことは、実際にあたしをストーカーしてたヤツは別人が少年院に服役してたとき、のうのうと生活してたってわけ?
でも掴まったことでストーカー行為はピタリと止んだ。
「俺だって驚いたよ。
鬼頭さんはショックで記憶を一部失った。
俺は手に怪我を負ったけれど、意識はしっかりしていた。退院後裁判の関係で法廷で会った奴は
俺を切り付けてきた男じゃなかった。
混乱したよ、俺も記憶を間違えているのか、と。
でも事件の詳細を語る彼の証言に間違ったところはなかった。
その後示談が成立し、その男は二年間の少年院服役になったことを知った。
そのとき法廷で顔を合わせたのが
俺と
アツだった。
そう…はじめてアツと会ったのは二年前、事件の直後だ。
原告側と被告側に座って対峙した俺たち。
アツは俺をまっすぐに俺を見てきて
“僕じゃない”と言う視線を送ってきた」
何てこと。
久米も右門もストーカー犯ではなく
二人とも立場は違うけれど、二年前の事件の被害者だった。



